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0001:手のしびれ〜

脊椎・脊髄外科]田宮 亜堂 医師
(2020/11/20 更新)

手のしびれ

手のしびれ

「手のしびれ」で当院に来院される方は、意外に少なくありません。脳神経外科や脊椎脊髄外科に毎日5,6人程度は心配されて受診して来られます。

手のしびれと言っても、指先だけがしびれて細かい作業がしにくくなってきた人もいれば、肩や腕がしびれて、時に痛みも感じる人や、首から手先まで全体的にしびれて、手が上がりにくくなっている人と様々な方がいらっしゃいます。

また片手だけがしびれている人もいれば、時間差で両手のしびれを自覚するようになった人もいます。あるいは、朝起きたときに手のしびれやこわばりがあり、時間が経つにつれて治まってしまう人、仕事中などに手のしびれや痛みが強くなって休憩をとらないといけない人とさまざまな症状の方が受診されてきます。

手のしびれが起こる主な原因はいろいろあり、脳や脊髄神経の病気によるもの、末梢神経の圧迫によるもの、内科疾患によるもの、血液の流れが悪くなって生じるものなどが挙げられます。

今回は、手のしびれの原因として考えられる主な病気についてご紹介します。急に強くしびれてきた場合やここ数日間手のしびれが続いている場合は、迷わずに受診して、検査を受けて原因を確認しましょう。

脳梗塞、脳出血

脳梗塞、脳出血

脳の血管が詰まったり、逆に出血したりしてしまうと、脳細胞に栄養となる血液が行きわたらなくなり、脳がダメージを受けます。その結果、ダメージを受けた脳の場所によっていろいろな障害を引き起こします。

脳梗塞や脳出血を起こした場所が体の感覚を支配する領域だった場合には、顔や手、足のしびれが症状として出現します。ダメージの範囲がわずかであれば、手のしびれに限局することもありますが、たいていは手全体と足全体というように体の半分(半身)に症状が出てくることがほとんどです。また手足の動きが悪くなる麻痺(運動麻痺)をともなうことも少なくありません。

体の広い範囲でのしびれや運動麻痺を自覚した場合はもちろん、さらに言葉がうまく出ない、めまい、ボーっとしているなどの意識障害、頭痛や吐き気をともなっている場合には脳の病気である可能性が非常に高いので、当科をはじめ、すぐに脳神経外科のある病院を受診してください。

またこういった症状が数分から1時間程度で治ったとしても、一過性脳虚血発作(TIA)と呼ばれる、治療しないと脳梗塞に移行しやすい病気になっている可能性もあるので、受診して検査を受けられることをおすすめします。

当院の場合は、夜間でもみなさまの緊急時に対応できるように医師がいますので、心配な場合はご連絡ください。(東船橋病院 TEL:047-468-0011

首の背骨の病気:頚椎症、頚椎椎間板ヘルニア、頚椎後縦靭帯骨化症など

首の背骨の病気

脳とつながっている脊髄神経は、背骨およびその周囲の組織によって守られています。背骨や椎間板、靭帯といった組織は、加齢とともに変形(変性)し、ときに脊髄神経を圧迫してしまうことがあります。

脊髄神経は枝分かれして、手足の感覚をつかさどる神経(感覚神経)、手足を動かす神経(運動神経)、また排尿や排便の機能をもつ神経となるため、おおもとの脊髄神経の圧迫により日常生活が不自由になってしまうような症状を呈することがあります。首の背骨(頚椎)で脊髄神経が圧迫されると、かなりの確率で手のしびれが起こります。

手のしびれの出かたとしては、腕や指先のそれぞれの箇所により支配している神経が異なる(デルマトームといいます)ので、肩、腕から手においていつも同じ範囲がしびれるようになります。また指先も手全体というよりは、親指側とか小指側とかしびれる範囲がだいたい決まっています。

手のしびれ以外にも、「手がこわばってうまく使えない」、「箸が持ちにくい」、「ボタンをかけにくい」、「財布から小銭を出すのに苦労する」などの症状(巧緻運動障害)がある場合や、首や肩、腕の痛みをともなうこともあります。

脊髄神経が強く圧迫された状態で、転倒したり追突事故にあったりすると頚髄損傷となって、手足が動かなくなってしまったり排尿が出にくくなったりして日常生活においてかなり不便なことになります。そうなる以前に、受診して検査を受けられ、状態によっては治療を受けることも大切です。

末梢神経が圧迫される病気:手根管症候群、胸郭出口症候群、肘部管症候群など

末梢神経が圧迫される病気

脊髄神経から枝分かれした神経は末梢神経となり、手足の先までのびています。その末梢神経が周囲の組織により途中で圧迫を受けると、手のしびれが起きることがあります。

手根管症候群は、手首で神経(正中神経)が圧迫されることにより親指から人差し指、中指、そして薬指の半分がしびれる病気です。手首を使う仕事している方、透析をされている方、妊娠中や更年期の方に多く見られる傾向があります。重症化すると、物をつまむことが難しくなる、指先をまっすぐ伸ばせなくなるなどの症状が出現します。

時に、頚椎症(前項目を参照してください)などの首の背骨の病気を併発していることがあり、首の手術をしても症状がなかなか改善しない場合には、手根管症候群を疑うことになります。

胸郭出口症候群は、首と胸の間にある太い血管や神経が通るトンネル(胸郭出口)で、腕にいく神経が圧迫されることで起こります。なで肩で肩の下がっている方や重い物を運ぶ方に起こりやすく、しびれの症状は首や肩から始まることがあります。血管の圧迫をともなっている場合には、指先への循環障害で爪の色が悪くなることがあります。

肘部管症候群とは、腕の小指側の神経(尺骨神経)が肘の隙間(肘部管)で圧迫されることで起こり、主に薬指と小指にしびれが現れます。重症になると手の小指側の感覚が鈍くなる、指がまっすぐ伸ばせなくなるなどの症状が出てきます。

糖尿病性末梢神経障害、甲状腺機能障害などの内科疾患

糖尿病・甲状腺機能低下症などの内科疾患では、神経障害の症状として手足首から末梢にしびれが現れることがあります。脳や脊髄の画像検査と同時に、血液検査を行うことで診断できます。

もともとこれらの病気でかかりつけの内科で治療されている方は、主治医と相談してください。また、今まで診断、指摘されたことがない方は、当院内科に受診することをおすすめします。

首や肩のコリ、筋肉痛、ストレスや自律神経障害が原因でしびれる場合

脊髄神経から枝分かれした神経は、腕や手に至るまでに首や肩の筋肉の中を走行しています。首や肩のコリあるいは筋肉痛で、筋肉が硬くなると、それにより神経が圧迫されて手がしびれることがあります。その場合は、手のひら全体がモワッとしびれるような感覚になることが多く、指圧や温め、筋弛緩薬等で筋肉がほぐれると症状は改善します。長時間のパソコン操作後や、下を向きながらの作業で首や肩の筋肉に疲労がたまった場合に起きることがあります。

また過度のストレスや自律神経障害、冷えた環境などが原因となって、手がしびれることもあります。

これらの症状に対しても、一定の効果のある治療法はあります。

手のしびれを自覚したら、どうすれば?

手のしびれの原因としては様々なことが考えられます。上記で挙げたもの以外の病気が原因になっていることもあります。

原因としては脊髄神経や末梢神経の圧迫や糖尿病による神経障害が多くみられる傾向にありますが、もちろん診断には病院の受診と検査が必要です。

ただし、前述したように手のしびれだけでなく、手足の麻痺や頭痛、めまい、吐き気、言葉が出にくいといった脳疾患を疑わせる症状をともなう場合には脳神経外科を一刻も早く受診しなくてはいけません。

東船橋病院では...

当院では、週4日(月、火、木、金)脊椎脊髄外科外来をおこなっております。
脊椎脊髄外科外来では、脳脊髄と末梢神経をいっぺんに診察することもできますので、気軽にお問合せください。(東船橋病院 TEL:047-468-0011

そのほかに月曜から土曜の週6日脳神経外科外来、毎週水曜日に整形外科外来をおこなっています。